「階段の上り下りで膝がズキズキする」「歩くたびに膝が痛くて、外出が怖くなってきた」——そんな悩みを抱えていませんか?
膝の痛みが強くなってくると、「動かすべきか、休ませるべきか」の判断が難しく、間違った対処をしてしまうことで症状が長引いてしまうケースが少なくありません。
この記事では、作業療法士として多くの膝痛の方のリハビリに関わってきた経験から、痛みが強い時期に本当に必要な知識と実践できるセルフケアをお伝えします。
膝の痛みが強くなる主な原因
膝の痛みが強くなる背景には、いくつかの異なるメカニズムがあります。原因によって対処法が変わるため、まず自分の状態を理解することが大切です。
①変形性膝関節症
軟骨がすり減り、骨どうしが直接ぶつかるようになる状態です。50代以降に多く、立ち上がり・歩き始め・階段で痛みが出やすくなります。進行すると安静時にも痛むようになることがあります。
②膝関節の不安定性
太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)をはじめとする筋力の低下によって膝が安定せず、歩くたびに余分な負荷がかかる状態です。膝がぐらつく感覚・力が抜ける感覚がある方はこのパターンが多く、筋力維持が回復の鍵になります。
③炎症による腫れ・熱感
膝に水が溜まっていたり、触れると熱っぽい場合は炎症が活発な状態です。このような急性増悪期(きゅうせいぞうあつき)には無理な運動を避けることが最優先です。炎症が落ち着いてから少しずつ動かすのが正しい順番です。
痛みが強いときにやってはいけないこと
「痛みがあっても動かした方が良い」という情報もありますが、強い痛みがある時期には逆効果になることがあります。以下のNG行動は避けましょう。
- 熱感・腫れがある状態での運動・マッサージ:炎症を悪化させます
- 正座・深くしゃがむ動作:関節内圧が一気に上がります
- 痛みを我慢して歩き続ける:庇い歩きが癖になり他の関節にも影響します
- 急に運動強度を上げる:「少し良くなった」タイミングでの無理は再燃リスクが高いです
痛みが強いときのセルフケア
強い痛みがある時期でも、状態に合わせて行えるセルフケアがあります。大切なのは「炎症が落ち着いているか」を見極めながら進めることです。
①アイシング(熱感・腫れがあるとき)
膝に熱感や腫れがある場合、まず優先すべきはアイシングです。

- タオルで包んだ保冷剤を膝に当てる(直接皮膚に当てると凍傷になるので必ずタオルを使用)
- 1回15〜20分を目安に、1日2〜3回
- 冷やした後は少し休んでから動き始める
熱感・腫れがない場合は無理にアイシングをする必要はありません。逆に血行を促す温めが有効なケースもあります。
②大腿四頭筋セッティング(寝たままできる筋力維持)
膝に体重をかけず、寝たまま行える筋力維持運動です。痛みが強い時期でも続けられる基本中の基本のリハビリです。

- 仰向けに寝て、膝をしっかり伸ばす
- 膝裏を床に押しつけるように太ももに力を入れる(5秒キープ)
- ゆっくり力を抜く。これを10回繰り返す
- 1日2〜3セット行う
「どこに力を入れているかわからない」という場合は、膝の少し上の太もも前面に手を置いて、筋肉が硬くなる感覚を確認しながら行うと感覚がつかみやすくなります。
この運動は地味に見えますが、大腿四頭筋の萎縮(使わないことによる筋力低下)を防ぐうえで非常に重要です。入院中のリハビリでも必ず取り入れられるほど、効果が確かめられています。
③サポーターで膝を安定させる
痛みが強い時期は、サポーターで膝を保護しながら動くことが負担の軽減につながります。
ただし、サポーターはあくまで「一時的な補助具」です。使いすぎると筋力低下を招くため、活動時のみ使用・安静時は外すのが基本です。「サポーターをしていれば運動してOK」ではなく、並行して筋力トレーニングを続けることが回復への近道です。
受診の目安
セルフケアを2〜4週間続けても改善がみられない場合や、以下のような症状がある場合は整形外科を受診してください。
- 安静時にも強い痛みがある
- 膝の腫れ・熱感が続いている
- 歩けないほどの強い痛みがある
- 膝が突然「ガクッ」と折れるような感覚がある
整形外科ではレントゲン・MRIによる詳細な診断のほか、インソールの処方・テーピング指導・超音波治療なども受けられます。
まとめ
膝の痛みが強い時期には、「動かす・動かさない」の判断が非常に重要です。
- 熱感・腫れがある → まずアイシングと安静
- 熱感がない → 寝たまま行える筋力維持運動(大腿四頭筋セッティング)
- 活動時の痛みが強い → サポーターで補助しながら、筋力トレーニングも並行して
焦って無理をすると症状が長引きます。「今の自分の状態はどのフェーズか」を意識しながら、少しずつ回復を積み重ねていきましょう。
補助具(サポーター)について:参考情報
サポーターは多くの種類が市販されており、固定力・素材・装着感がそれぞれ異なります。購入の参考として、よく使われているタイプを紹介します。
選ぶ際のポイント
- 日常使いなら:着脱しやすいスリーブタイプ
- ぐらつきが強いなら:側面に支柱が入ったタイプ
- スポーツ・長距離歩行なら:薄手で固定力の高いタイプ
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※サポーターはあくまで補助具です。症状が強い場合や、どれを選べばよいか迷う場合は、かかりつけ医や理学療法士・作業療法士に相談することをおすすめします。
